伝統工芸が暮らしのなかに息づく出会い多き越前の旅

福井県のほぼ中央、知る人ぞ知る伝統工芸の宝庫、越前。
和紙、漆器、陶器、刃物、最近では眼鏡で知られています。
海が近く、大陸文化の玄関口だった歴史を持ち、京都や大阪とも古くから行き来があり、政治・経済・文化の中心地として栄えてきました。
同時に、山々に囲まれた自然豊かな地域であり、盆地では米作りに励み、中山間地では林業のほか、大陸から伝わった文化を独自に熟成させていきました。

農村に足を踏み入れれば、田園風景が広がり、昔ながらの民家での暮らしが残っています。
土地の人の口からは、この土地の歴史深さ、文化と自然の豊かさが、ごく普通に語られます。
そして、何より旅人を魅了する人の温かさがあります。
たった一度の出会いでも、まるで親戚のような近しさ。
行ってみませんか、越前へ。きっとまた足を運びたくなる。

【味わう】

旅の楽しみはなんといっても食。
越前の風土が育んだ豊かな味覚を楽しみましょう。
米に野菜、魚介。そして保存食も豊かです。
もちろん外食もいいけれど、農家民宿で味わう手料理は格別。
とれたての旬の素材を活かした、おもてなしの気持ちが込められた家庭の味。
初めての味覚なのに、なぜかほっこり落ち着く味わいです。

「コシヒカリ発祥の地」福井県は、有数のコメどころで知られています。県全体としてお米の美味しさのレベルは高く、農家民宿の多くが作る自家用のお米は絶品。とくに「稲葉さんち」が中心になってコウノトリの再来を目指す自然農法を実践し、無農薬・無化学肥料の自然生態系に配慮した米づくりに取り組んでいます。また、最近では約6年の歳月を掛けて開発した新品種「いちほまれ」という自信作が一部で味わうことができます。

郷土料理

知名度が高い越前そば(おろしそば)。農家民宿ではそば打ち体験ができるところもあり、打ち立てのそばでいただく贅沢も味わえます。
ほか、サバのへしこ、越前ガニの鍋もの、ずいきを使った“すこ”という祭事用の料理は有名です。それ以外にも地元の旬の素材を使ったいつもの家庭料理も、立派な郷土料理です。むかごご飯、なます、たくあんの煮物、油揚げ料理、など気取らない数々は滋味深いものばかり。

  • おろしそば。大根おろしとつゆ、ねぎを添えただけのシンプルな食べ方が一般的です。
  • なます。写真は大根と柿のなます。ほか、キュウリやニンジンなど野菜を使ったものが多いです。
  • 油揚げの煮物。油揚げの消費量日本一と言われている福井。油揚げといっても厚みがあり、厚揚げのような油揚げというのが特徴的です。
  • 中山間地や農村地帯では、いろいろな山菜がとれます。写真は芋の軸(芋づる)の煮物。
  • キュウリとナス、シソなどを塩漬けした後に味噌で漬ける“やたら漬け”。癖になる味です。
  • 若狭地方がメインですが、サバは福井県全土でポピュラーな食べ物。へしこのほか、サバの一本焼き(浜焼きサバ)、焼きサバ寿司、サバのなれ寿司などメニューも豊富。

【語る】

旅は、人との出会いで印象が大きく変わるものです。
越前は約1500年前にはすでに拓かれていたといわれる歴史深い土地。
ここで、どんな出会いが待っているのでしょうか。
郷土料理の作り方、環境と健康にこだわった米作り、山の水の美味しさ、紙漉きや漆塗りの職人たちの技、山菜のとれる山の中腹、山の頂きで見渡す日本海・・・。
地元の人は、ネットでは決してたどりつかない、実体験を伴った情報の宝庫です。
越前で暮らす人たちは
どうしてこんなにも人懐こく、親しげなのでしょう。
初めて会ったばかりなのに、
共に食卓を囲み、酒を酌み交わせば、まるで親戚のような近しさ。
その背景には大陸文化の玄関口だったという土地の歴史と無縁ではない気がします。
訪れる人を自然に受け入れる土地なのかもしれません。
旅先での出会いは一生もの。
みんな、本当にいい顔をしています。
思い切って越前の人たちの懐に飛び込んでみませんか。

  • 「ここで登場するのは農家民宿の主人たち。この土地を愛し、誇りに思っている人たちです。この笑顔を見てください。会いに行きたくなりませんか。」

【泊まる】

越前の暮らしに触れてみたい。地元の人ともっと話したい。
そう思ったら、農家民宿がおすすめです。
古民家が多く、よく使い込まれ黒光りする壁や柱、広々した土間や玄関から、代々住み継いできた先人の暮らし方が見えてきます。
そして、農家民宿の主たちは、人が好き。話題も豊富です。
何より旅人たちとの語らいを楽しみにしています。
共に食卓を囲めば会話も弾みます。
兼業農家を含め、自分たちの食べるものは自分たちで作っている家が多く、とれたて野菜を使った家庭料理は、素朴で味わい深いもの。
一緒に料理をするもよし、お任せするもよし、また、自分たちで自炊する選択肢もあります。
古民家ならではの不便さもあるかもしれませんが、それを含めてまるごと滞在を楽しむ。
そんな気持ちで過ごせば、見えてくる世界も広がります。
一度訪れたら、また会いたくなる。
もう、あなたの第2の故郷です。

  • 「ふくいの伝統的古民家」に認定されている農家民宿が多いのが特徴的。切妻造をメインに、白漆喰塗や板張りの壁、屋根に煙出しを持つ家など、手を加えながら長持ちさせてきました。1軒1軒、見ごたえがあります。

【眺める・愛でる】

越前は、四方を低山に囲まれた盆地。
重なり合う山の稜線、手前に広がる田園風景と畑。
ところどころに見える小さな集落と古い寺や神社、民家の周りや道端には、可憐な草花や木の実が美しい彩りを見せてくれます。
野菜を洗う水路など、生活に密着した風景に潤いを感じます。
また、稲の収穫後に田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」には山々が逆さに映り、一幅の絵のような景色に惹き込まれます。
人の暮らしが、四季折々の自然と見事に調和している越前の農村。
ただただ眺めるだけでも、穏やかな気持ちになっていきます。
自然が身近にある暮らしがいかに豊かであるか。
越前ではそんなことを実感できる旅になりそうです。

【体験する】

ここならではの体験は、旅の醍醐味。
農家民宿では季節に応じた農作業体験(種まき、田植え、草取り、収穫体験など)や山菜採り、キノコ狩り、料理づくりの体験ができます。
宿によっては、越前自慢のそば打ち体験ができたり、石釜でピザ焼き、茶事、漆器の絵付けをはじめ伝統工芸に触れる体験、史跡めぐりや里山散策などの体験も可能です。
出会いと同じく、体験も一期一会のもの。
五感をフルに使って全身で味わいましょう。
予約時に聞いてみるとよいでしょう。
旅こそ欲張りあっていい。

  • 農作業体験。季節により、作物の種類も作業内容も変わります。土に触れ、汗をかく体験も気持ちのいいものです。
  • 越前塗りや越前焼きの器や日用品は、こちらの暮らしではよく見かけます。漆職人のところへ案内して、絵付け(蒔絵)体験もできます。ほかにも越前和紙の紙漉きや和紙作り体験できる場所などへのご案内も。
  • そば打ち体験。打ち立てのそばの香りは格別です。
  • 趣ある古民家での茶飯釜による茶事風食事体験。使われる漆器や和紙は地元の伝統工芸品で、外国人にも好評です。
  • 手作りのアスレチック体験など、子ども連れにもうれしいおもてなし。

シェアする