訪れるたびに豊かさを知る 土地を愛し、歴史を語る人吉球磨
熊本県最南部。
急峻な九州山地に囲まれたところに人吉・球磨はあります。
歴史ある場所で、鎌倉時代より700年にわたり、相良の殿様がこの地を治めました。
これほど続いたのは、殿様がこの土地にもともと根付く文化を尊重し、民衆と一体となった町づくりを進めたことが理由のひとつ。
今なお古くからの町並みが残り、寺社・仏閣は地域の住民たちで守られています。
この地域は、球磨川を代表とする水の豊かな土地であり、平地は米どころとして発達しました。
米焼酎はその豊かさの表れ。
蔵元のほとんどが人吉球磨に集中しています。
豊かな自然と食、歴史と文化に恵まれた人吉球磨で生まれ育った人たちの土地への誇り、愛着はゆるぎないものがあります。
土地のことを聞かれれば、人懐っこい笑顔で話は尽きません。
旅は人との出会いから始まります。
人吉球磨を知り、豊かさに触れてみませんか。
【味わう】
旅の楽しみはなんといっても食。
人吉球磨の独特の気候ならではの豊かな味覚を楽しみましょう。
外食もいいけれど、農家民宿での手作り料理は一度体験するとやみつきになる美味しさと楽しさ。
素朴でやさしい人吉球磨の旬の味覚を存分に堪能できます。
ランチタイムのおすすめの店もご紹介します。
- 米
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山地に囲まれた盆地である人吉球磨は、川や湧き水も多く水に恵まれています。肥沃な土地で、気候は昼夜の寒暖の差が大きく、米どころとしても知られています。
- 川魚
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人吉球磨を流れる球磨川や支流の川辺川は、南国随一の清流として釣り人の間でも有名。川魚といえば鮎! そしてヤマメ。シンプルな塩焼きはもちろん、味噌焼き、刺身、甘露煮や南蛮漬けなどバリエーションも豊富です。鮎を使った駅弁も人気。ほかに鰻や鯉の料理もおすすめ。
- 果物、野菜、茶
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気候条件から農産物の糖度が高く、ぶどうやメロン、ナシ、イチゴなどの甘さはお墨付き。栗やお茶栽培にも適した土地で、山間部に広がる栗畑や茶畑の眺めはなんとも美しいものです。大粒で甘みのある栗や香り豊かなお茶は遠方から買い付けにくるほど味がよいことで知られています。
- 郷土料理
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『つぼん汁』は、つぼんしゅる、つぼんじるなどと呼ばれる、人吉球磨地域の郷土料理。もともとお祭りやお祝い事などで作られていたもの。いりこと鶏肉のだしが特徴的で、根菜類など小さめに切った具がたっぷり入った醤油仕立ての汁ものです。
いきなり団子は熊本県全域で知られる、昔から家庭で作られてきたお菓子。サツマイモと餡を餅や小麦粉を練った生地で包み、蒸かしたものです。 - 山菜、きのこ
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山の幸といえば春は山菜、秋はきのこ。種類もとても豊富で、都会の人たちにとっては驚ろくほどですが、ちょっとした林や森などどこにでも見つかります。摘み立ての山菜やきのこを使った料理は、田舎ならでは。
レストラン「ひまわり亭」
住所:〒868-0075 人吉市矢黒町1880-2
連絡先:0966-22-1044
アクセス:最寄り駅・交通: JR人吉駅から車で約5分。九州自動車道「人吉インター」から車で約12分。
営業時間:11:30~22:00 (ランチ:11:30~14:30、ディナーはご予約のみ)
休み:年末年始
メニュー:ひまわり亭定食1080円、ひまわり御膳1620円(共に鮎付きはプラス540円)、お子様ランチ870円、各種ドリンク、アルコール類ほか
くま川のほとり、ガラス張りの窓から陽光差し込む明るい店内。古民家を移築して作られたレストラン&研修施設。
オーナーは人吉球磨の有名人である本田節さん。グリーンツーリズムや地域活性化などの活動のけん引役です。
30代後半で深刻な病にかかったことをきっかけに、食・農・命について考えるようになり、ボランティア活動やまちづくり活動を始め、そこで出会った仲間たちと立ち上げたのが当レストラン。地産地消、"食"を地域資源とした拠点として郷土の家庭料理を提供しています。
料理には人吉球磨の旬の食材と無農薬米を使います。化学調味料不使用など食の安全にもこだわっています。メニューは月替わり。昔ながらの伝承料理に創作性を取り入れるなど、幅広い年代の方々に満足いただける内容を目指しています。
また、研修施設が併設されており、各種団体様の研修や講演会などに利用できます。
節さんの講演や料理の解説ほか、色々なお話や、料理実習なども開催しています。研修会などでの利用や宿泊も可能です。
ラーメン&居酒屋「ゆうがの杜」
住所:〒868-0075球磨郡多良木町久米2048-1
連絡先:0966-42-5223
アクセス:くま川鉄多良木駅から車で約10分。九州自動車道「人吉インター」から車で約20分。
営業:ラーメン屋はランチタイムのみ。夜の居酒屋は予約制
メニュー:ラーメンほか
農家民宿「ゆうがの杜」の敷地内にある納屋を改装した居酒屋兼ラーメン屋。知る人ぞ知る場所で、宿の主である宮本裕子さんが切り盛りしていています。
居酒屋は予約制。ラーメン屋は昼のみの営業です。
居酒屋メニューは何でもあり。サラダから揚げ物、煮物、焼き物まで手際よく調理していきます。料理が得意で研究熱心な裕子さんのレシピのバリエーションはどんどん増えています。30年近く継ぎ足しながら使っている自家製醤油麹をベースにした味付けはここならでは。
美味しい手料理に合わせるのは地元の米焼酎。球磨焼酎と呼ばれ、地元の人々に愛されるお酒。数種類用意しているので、飲み比べも楽しいものです。
ラーメンは特製鶏ガラベースの塩ラーメン。さっぱりした後味ながら癖になる美味しさ。シンプルだからこそ、飽きない味です。
【語る】
旅は、人との出会いで印象が大きく変わるものです。
どこでもない人吉球磨ならではの旅だからこそ、地元の人との会話から歴史を知り、地形・気候を肌で感じ、味わいが何倍も豊かになります。
相良の殿様ゆかりの場所、地名の由来、代々伝わる郷土料理レシピ、水の美味しさ、そして、夕陽の美しいスポット、明日の天気、町が見渡せる場所、電車が通過する時間帯、おすすめの温泉、漬物やの味噌の仕込み方、山菜のとれる場所・・・。
地元の人は、ネットでは決してたどりつかない、実体験を伴った情報の宝庫です。
旅は、自分で選んで作っていくもの。
人吉球磨の方言はどんなでしょう。言葉を交わすことで、人吉球磨の魅力に触れられます。
食卓を囲み、酒杯を交わせば、もう赤の他人ではありません。
料理がさらに美味しく、疲れもぐっと癒されることでしょう。
思わず誰にも言えなかった悩みを打ち上けてしまう、そんな心の扉を開いてくれるのも旅先ならではの出会いです。
人吉球磨の人たちは、何といっても笑顔がいい。
あったかく迎え入れてくれます。
遠慮することなく、どうぞ声をかけてみてください。
【泊まる】
人吉球磨の暮らしに触れてみたい。
地元の人ともっと話したい。
そう思ったら農家民宿がおすすめ。
兼業農家を含め、自分たちの食べるものは自分たちで作っている家が多く、採れたて野菜を使った家庭料理が楽しめます。
一緒に料理をするもよし、お任せするもよし。
共に食卓を囲めば会話も弾みます。
農家民宿の主たちは、人が好き。
話題も豊富です。
そして、何より旅人たちとの語らいを楽しみにしています。
各宿によって特徴もさまざま。
どんな体験ができるかで選んでもよいし、
場所で選ぶのもあり。
直感で選ぶのも面白いかもしれません。
どの宿にもそれぞれの魅力がありますが、
不便さを含めて、
ありのままの暮らしに触れることを楽しむこと。
ホテルや旅館など他の宿泊施設と比べ、
互いの距離が近いのも特徴的。
第2の故郷としてリピーターになる人が多いのも
農家民宿ならではです。
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球磨郡多良木町
とよのあかり -
球磨郡相良村
くりの里 -
球磨郡水上村
ゆきどまりの静宿 瓢鰻亭
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球磨郡水上村
農家の宿 茶乃実 -
球磨郡あさぎり町
ゆっくりサボッテン
馬場のてっちゃん家 -
球磨郡錦町
平岩の和ちゃん家 ぎゃ
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人吉市
つばき坂 -
人吉市
涼水戸 すずみど の宿 -
人吉市
嵯峨の里 古時香
【眺める・愛でる】
人吉球磨は、四方を山に囲まれた盆地。
どこを向いても自然に囲まれています。
急峻な九州山地、その間を縫うように流れる清流。
そして盆地を横断する球磨川。
四季折々の美しさが味わえます。
広がる田園風景、収穫の季節の果実たち。
雨に濡れた緑や朝霧の幻想的な雰囲気も絵になります。
雄大な自然を感じる一方で、民家の周りや田畑のあぜ道などに目をやれば、可憐な草花や木の実が美しい彩りを見せてくれます。
【体験する】
ここならではの体験は旅の醍醐味。ほとんどの農家民宿では農作物作業体験(種まき、田植え、草取り、収穫体験など)や料理づくりの体験ができます。
ほか、牛を飼っているところでは子牛のミルクやり体験が、近くに清流がある宿は釣り体験など、それぞれに特徴があります。
宿によっては羽釜でご飯を炊く、ピザ釜でピザを焼く、五右衛門風呂に入るなどの体験もできます。
体験は季節によって内容が変わるものもあります。
出会いと同じく一期一会のものです。
五感をフルに使って全身で味わいましょう。
また、泊まらなくても収穫など体験や、地元の史跡めぐり、急流下りなど日帰りで体験できるメニューもいろいろとあります。
予約時に聞いてみるとよいでしょう。
ナシ狩り
「平野果樹園」
住所: 〒868-0303 球磨郡錦町大字西542
連絡先:0966-38-0622
アクセス:最寄り駅・交通: JR人吉駅から車で約20分。九州自動車道「人吉インター」から車で約20分。
【特徴】
ご主人の平野洗一さんは、当果樹園の4代目。この場所は元々開墾地で、大正2年に初代が移ってきたそうです。先代までは米と桃が中心でしたが、平野さんの代から梨を始めて、40年経ちます。8月頭、幸水から始まり、豊水、あきづき、大天、新高、新興の順に収穫していきます。馴染みのない品種名もありますが、甘みや歯ざわり、香りなどそれぞれに個性があります。
当園の梨作りの特徴はEM栽培を取り入れていること。EM栽培はEM菌と、糖蜜・米ぬか・魚粉・貝化石といった有機肥料を使った栽培方法。これにミネラル豊富な九州山系の伏流水で、安心安全な美味しい梨ができるそうです。
梨以外には桃、ネクタリンやプラム、柿なども栽培しています。体験は梨のみ。
また、梨狩り以外のお楽しみもあります。それはレコードのコレクション。40年かけて収集したレコードは数え切れないほど。美空ひばりや吉永小百合など昭和歌謡を中心に、フォークやポップスなどオールジャンル揃っています。レコードマニア涎垂のレアものもありそうです。視聴もできるので、気になった方はぜひ。
ほかにも梨畑の脇に太陽光パネルが並んでいたり、錦鯉の水槽があったりと平野さんの興味の範囲は広く、話題も豊富です。種類豊富な花々や地植えした五葉松など、グリーンツーリズムを意識した庭先の手入れも見ごたえありです。
・梨の収穫シーズンは8月お盆頃から11月前半まで。
・体験は30分程度。無料、持ち帰りは有料
【乗る】
ローカル線に乗ることは旅の醍醐味のひとつ。
人吉球磨地域には、くま川鉄道があります。
駅は14あり、ほとんどが無人駅というのも、地方ならでは。
週末運行の観光列車・田園シンフォニーの"はぴねすトレイン"は大人気。
その名のとおり、ベートーベンの交響曲「田園」をBGMに聴きながら美しい田園風景が楽しめます。
停車駅では多彩なおもてなしが企画され、ちょっと贅沢な鉄道の旅を味わえます。
一度はぜひ!ご乗車ください。
「くま川鉄道」
くま川鉄道は、九州の小京都と呼ばれる人吉温泉郷から、県で第2の高峰・市房山を擁する湯前町までを結ぶ単線のローカル列車。片道24.8km、球磨川沿いの田園地帯を東西に走ります。
平成元年、第三セクターとして開業。日本三急流・球磨川にちなんで名付けられました。
全部で14駅あります。
おかどめ幸福駅は幸せを呼ぶ駅として全国的にも知られ、駅前には幸福のポストが設置されています。湯前駅は登録有形文化財です。また、あさぎり駅には図書館や多目的ホールをもつポッポ館があり、多良木駅のすぐ隣にはえびすの湯やえびす物産館、湯前駅横には湯前まんが美術館があります。
朝夕は通学・通勤列車として利用されていますが、もっと観光に力を入れようと昼間の時間帯を利用して、平成26年から観光用にデザインされた「田園シンフォニー」の運行が開始しました。車両は全部で5両、5色それぞれにデザインされています。
現在は、土日祝日限定で観光列車「はぴねすトレイン」として運行(要予約)。停車駅では、周辺の観光案内や、お茶のお接待、地元物産品の試食販売、写真撮影など"しあわせ探しの列車旅"として多彩なおもてなしが企画されているほか、学業祈願や幸福祈願、繁盛祈願など、ご利益いっぱいの旅が満喫できます。
o運行会社: くま川鉄道
o運行区間: 人吉温泉から湯前への一方向のみ
o運行日・本数: 毎週土・日・祝日 各日1便(人吉温泉発・湯前行き)のみ運行
o所要時間: 1時間25分
o運賃:大人片道2500円、往復3000円